潮芦屋の海鮮kitchenくぅ 右手だけで生みだされる宝箱のような海鮮料理

潮芦屋の海鮮kitchenくぅ 右手だけで生みだされる宝箱のような海鮮料理

今年3月、南芦屋浜にオープンした「海鮮kitchenくぅ」のお料理。
天然ものの魚貝と野菜の手間暇かけた一品一品が、右手だけで作られているんです。
その見事な技と美味しさを、ほんの一部ご紹介します。

右手だけで生みだされる宝箱のような海鮮料理

「海鮮kitchenくぅ」は南芦屋浜の住宅地の一角にある、海鮮を使ったお寿司・お惣菜・お弁当のお店です。目にも鮮やかな魚貝と野菜を組み合わせたお料理は、まるで宝箱を開けたかのよう。そんなお料理の数々、実は右手だけで生み出されているんです。

店主の若松啓司(ひろし)さんの料理人としてのキャリアは40年。
一昨年冬、甲南山手にお店を構えられた翌月に脳出血で倒れられ、右半身の麻痺などの症状が残り、やむなくお店を閉められました。まだ50代ということもあり、「介護を受けて寝たきりのような生活にはなりたくなかった」と若松さん。昨年5月にやっとご自宅に戻ることができ、リハビリを続け、今年の3月にご自宅の一部でお店をオープンされました。
住宅地の中にあり、最初は苦戦したものの、現在はご近所の方やお得意様が8割で、インスタを見たという西宮、神戸、大阪からもお客様が来られるそう。取材中もご予約のお電話やお客様が続けて来られていました。

工夫とアイディア、片手でもプロの技

厨房は車いすと片手で作業しやすいよう、工夫にあふれています。
素材を固定するための釘が打ってある まな板は市販されているのだそう。手順を考えて作業したり、マグネットで端を押さえてラップをかけたり、固定するための工具「万力」を使ってザザエなどの貝の身を取り出すなど、様々な工夫とアイディアで調理をされています。
若松さんは片手でもできるアイディアを思いついても、片手故にすぐ簡単には実行できない歯がゆさも感じられていました。そこは奥様の手も借り、ご夫婦二人三脚で挑戦されています。

片手でのキュウリの飾り切りと、まだやり方の試行錯誤をしている大根の桂剥きを見せていただきました。キュウリは剣山にさして固定し、繊細な飾りを作り上げていきます。大根は固定しながら回す方法をまだ実験中。片手でもプロの技が光る仕上がりにしばし感動。
「同じ病気の人に『こんなにできるんだ』『頑張れるんだ』と元気づけられたら。こんな道具が使えることも知ってほしい」と若松さん。現在も週一のリハビリを続けながら、お店を切り盛りされています。

天然素材にこだわったお料理の数々をご自宅で!

まだ店頭に並べる前のお料理の数々を見せていただきました。ハモの南蛮漬け、低温調理機で蒸した後に遠赤外線グリルで焼いた鰻、サザエのつぼ焼き、煮つけ、焼き物に揚げ物など、どれも全部食べたくなる香り!毎日、いろいろと違ったメニューをたくさん作られています。
食材へのこだわりは、「味を落としたくない」と天然もの。養殖とはやっぱり違うのだそう。

この日切ったばかりのカツオのたたきを、カルパッチョ風にドレッシングでいただきました。たっぷりの玉ねぎにピンク色のスプラウトが、甘みを感じるカツオとぴったり。

お寿司やお惣菜だけでなく、季節ごとに変わるアミューズは、ちょっと料亭に行った時のお料理のような一口でもハレの気分を味わえます。この華やかさは家族の集まりやお友達を呼んだ誕生会やパーティに、魚貝たっぷりのオードブルやお寿司を注文するのにぴったりですね。

「夕方に行ったら、もう何も残っていないかも」と思っていたら、「少しお待ちいただければお刺身やお寿司、焼き物などお作りできますよ」と嬉しいお言葉が。お昼ご飯や晩御飯を、ちょっといい海鮮料理にしたいと思った時にも、お店に行ってみてくださいね。

YouTubeでは若松さんの見事な手さばきを動画で見ることができます。

<ライター 杉本せつこ>