イヌにも貧血があると聞きました。友人の犬ですが貧血の治療をしているようです。貧血は治る病気なのでしょうか?
犬の貧血の理由はいくつもありますので貧血の原因によって治る場合と治らない場合があります。一般的によく見られる貧血、特に当院で多いのは免疫介在性溶血性貧血とバベシアですので、それらについてお話しします。
バベシアは草むらに潜んでいるマダニが感染して起こる貧血です。マダニに咬まれたからといってすぐに貧血が起こるわけではなく、感染から数年たってから発症したり、治療しても何度も再発を繰り返すこともあるので、感染しないようマダニ予防を徹底する必要があります。当院では皆さんしっかりマダニ予防していただいているので最近ではほとんどみられなくなりました。
次に、免疫介在性溶血性貧血ですが、当院では年に数例以上みられます。この病気は、自身の体を守るはずの免疫が、自身の赤血球を破壊することによりおこる貧血です。症状として、粘膜や皮膚が貧血のため蒼白になり、黄疸、尿色が濃く、元気、食欲低下、発熱がみられます。治療は、ステロイドなどによる免疫抑制療法が中心になります。緊急時には高額な薬ですがヒト免疫グロブリン製剤という薬を使用することもあります。輸血は病状を悪化させる可能性があるので、できる限り回避したいのですが、命を脅かすほどの貧血を起こしている場合には十分な適合検査と副作用の予防策をとった上で実施します。犬の免疫介在性溶血性貧血の1か月生存率は50%~70%と言われていますが、逆に言うと30%~50%は治療の甲斐なく亡くなるという病気です。現実にはそこまで死亡率が高い印象はありませんが、早期の的確な診断と治療の継続が必要です。ステロイドと免疫抑制剤で貧血が改善し安定したとしても、数週間から数か月後に再発することがあるので、しばらくの間は投薬を続け、休薬後も定期的な経過観察をするようにしています。