お散歩仲間のワンちゃんがリンパ腫という病気になったそうです。悪性腫瘍とききましたが治るのでしょうか?
リンパ節は体のいたるところに存在し、本来はリンパ液の中に入り込んだ細菌などをやっつける役割を担っています。そのリンパ節がガン化するのがリンパ腫という悪性腫瘍で、ヒトにも、そして犬、猫にもみられます。リンパ腫にはいろんなタイプがあります。もっとも多いタイプは体の表層にあるリンパ節(下あごのちょうどえらの下あたりや膝関節の後ろ側など)が腫れるもので、それ以外にも胸の中のリンパ節がガン化するもの、腸管や脾臓、腎臓など内臓器にみられるリンパ腫、あと、ひどい皮膚病のようにみえる皮膚リンパ腫というようなものがあります。多くの場合、発見時に動物自身の体調も悪化しているのですが、なかにはゆっくり進行するため、動物はいたって元気にみえるタイプのリンパ腫もあります。
治療は化学療法といって、抗がん剤治療になります。いろいろなプロトコール、つまり投与方法がありますが、もっともよく用いられる方法は、数種類の抗がん剤を週替わりで、最初は週に1回のペースで投与します。抗がん剤というとヒトの場合、嘔吐や脱毛などの副作用を心配されますが、動物の場合、個体差はあるもののヒトほどひどい症状をしめすことはあまりないようです。
多くのリンパ腫に対して最初は抗がん剤が反応して、リンパ節の腫れが縮小し、動物も元気になります。数ヶ月に及ぶ抗がん剤治療が予定通り順調に終われば、いったん終了して経過観察となります。運よくこの段階で症状が消えていても、これは完治したというわけではなく、寛解(かんかい)という状態、つまり、まだいつ再発するかもしれないという状態と考えたほうがいいでしょう。そしてほとんどの場合、残念ながら再発します。リンパ腫は悪性腫瘍のなかで化学療法に非常に良く反応する腫瘍ではあるものの、抗がん剤にまったく反応しない、改善を認めないこともあります。そういった場合は、いくつもの抗がん剤を順番に試しながら治療していくことになりますが、予後不良、つまりあまり長く生きられないことが多いように思います。
ご自宅で胸の中のリンパ節や内臓をチェックするというのは難しいですが、ワンちゃんネコちゃんの体を触ってみて、何か気になるしこりを見つけた時はできるだけ早く動物病院で検査してもらうようにしましょう。