うちの犬の太ももの外側に半年以上前からできものがあったのですが大きさも変わらないし、経過観察していました。先日動物病院で肥満細胞腫だと診断され、手術をすすめられました。手術したほうがいいでしょうか?
肥満細胞というのは体の各所に存在し、アレルギー反応や炎症反応の過程において不可欠な役割を果たしている細胞のことで、肥満細胞が皮膚で腫瘍性増殖したものを皮膚肥満細胞腫といい、やっかいな悪性腫瘍のひとつです。数か月から数年、少しずつ大きくなりながらも全く他の症状をみせずに安定してみえるタイプのものもありますし、急速に腫瘍が腫大するようなものもあります。
肥満細胞腫は細胞診で比較的簡単に診断でき、部位や大きさなどを考慮し、手術可能なものは早期の実施をおすすめします。これは、通常の腫瘍を切除するときよりも切除範囲を広く、かつ深く取る必要があるので、腫瘍が大きくなればなるほど、発生部位によっては手術が不可能になることがあるからです。現在の大きさがどの程度か存じませんが、太ももの外側でしたら比較的手術しやすい場所なので早めに切除した方がいいでしょう。手術を望まれず、長期的に肥満細胞腫を経過観察されていた方もありましたが、3年ぐらいたった時に急に悪化したということもありました。
手術を望まれない場合、あるいは、手術ができない状況の場合は、抗がん剤による化学療法か放射線療法もある程度の効果は期待できます。抗がん剤の中には肥満細胞腫に比較的よく反応してくれる動物薬も数年前に販売されるようになりました。2~3日に1回の飲み薬ですし副作用もあまり多くないようです。ただし、効果がいつまでも続くというものではありませんし、全く効果がみられない場合もあります。放射線療法も効果的ですが、実施可能な施設が限られていること、週に2~3回の麻酔をかけての治療となるので飼い主さんとワンちゃんへの負担は小さいものではないでしょう。
最初にも述べましたが肥満細胞腫は厄介な腫瘍のひとつです。手術で切り取ってもまた別の場所にできることも実際あります。ですが、きっちり拡大切除ができれば術後再発もなく過ごすことも十分期待できるので、ほかに問題がなければ、まずは手術をお受けになられることをおすすめします。