スティング

「騙すより騙される人間になりなさい」という言葉があります。人を騙すような悪人になるくらいなら、いっそ騙される善人になりなさいという意味です。なかなか立派な心がけですが、どうせなら騙されないようにもなりたいものです。さて人を上手く騙すのは結構難しいもので、騙すことを職業とする詐欺師には高度な頭脳と演技力、そして度胸が要求されます。
今回の映画はそんな詐欺師を描いた70年代の名作「スティング」です。
ケチな詐欺師、フッカーはいつものように通行人を騙して金をせしめますが、これが思わぬ大金。それもそのはず、その金は大物ギャング、ロネガンの賭場の金だったのです。ロネガンに相棒ルーサーを殺され、自らも追われる身になったフッカーは、ルーサーのかつての仲間で伝説的詐欺師、ゴンドーフとともに復讐を企みます。
詐欺師が主人公なだけあってお話は二転三転、最後の最後まで結末が読めません。本作には数々の詐欺が描かれていますが、すべて鮮やかでスタイリッシュ。まるで手品の種あかしを見るような楽しみもあります。有名なスティングのテーマに代表される軽快な音楽にのって展開される物語は、犯罪を扱いながらも暗さを感じさせず爽快感すら感じさせます。
監督と脚本は「明日に向かって撃て!」のジョージ・ロイ・ヒル。本作でアカデミー監督賞を受賞してます。
若い詐欺師フッカーを演じるのはロバート・レッドフォード。数々の映画に出演している彼ですが、スターになるきっかけは「明日に向かって撃て!」で、同作でも共演した名優ポール・ニューマンが伝説の詐欺師ゴンドーフを演じています。(つまり本作は「明日に向かって撃て!」のトリオが再び組んだ作品でもあるのです。)悪役ロネガンは「007ロシアより愛を込めて」で冷酷な暗殺者を演じたロバート・ショウが演じています。
これだけ達者な役者が揃って脚本が素晴らしいんですから、面白い映画になって当たり前なのかもしれません。
本作のような過去の名作を今もう一度、じっくりと観てみるのもなかなかよいものです。
最新の驚愕映像満載の映画のような派手さは無いかもしれませんが、そのぶん隅々まで気を配った中身の濃い映画がたくさんあります。
一時期は60、70年代の映画はDVD化もされず、レンタルビデオ屋さんでもなかなか置いていないことが多く、過去の名作を鑑賞する機会はなかなかありませんでした。しかし昨今のDVDの低価格化で、こうした過去の作品もDVD化されるようになり2000円前後で購入できるようになりました。機会があれば本作のような過去の名作をご覧になってみてはいかがでしょうか。
さて、「騙すより騙される人間になりなさい」という言葉とともに我が身を振り返ってみれば、人を騙すほどの頭脳も度胸もなく、善人というにはあまりに疑い深く、騙し取られるほどの財産も無いという中途半端ぶり。
これはこれで幸せなのでしょうかね。
CINEMA DATA
1973年制作
【配給】 | ユニバーサルスタジオ |
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【監督】 | ジョージ・ロイ・ヒル |
【出演】 | ポール・ニューマン |
ロバート・レッドフォード | |
ロバート・ショウ |
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンよりDVD発売中
©Eiga-zaru 2004-2018
※掲載している情報は、2005.10.01の情報です。
そのため記載内容が、最新のものと異なる場合があります。
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