英雄~HERO~

ジェット・リーといえば、アクション映画好きの方ならば、誰でも知っているカンフーアクションの第一人者です。「ワンス・アポン・ア・イン・チャイナ」シリーズなど、数々のアクション映画に主演し、ハリウッドにも進出して「リーサル・ウエポン4」では悪役を演じ、キレのあるアクションで強烈な印象を残しました。ところがハリウッド進出後、「ロミオ・マスト・ダイ」「キス・オブ・ザ・ドラゴン」「ザ・ワン」などに主演しましたが、どれもイマイチ。正直、過去の主演作のほうが数倍面白いというパッとしない有様で、要するに作品に恵まれていなかったわけです。
この「英雄~HERO~」はそのジェット・リーが久々にめぐりあった大作なのです。
2000年前、戦乱の中国、秦の始皇帝のもとに一人の剣士が訪ねてきます。始皇帝暗殺をもくろむ三人の刺客を彼が倒したというのです。
「無名」と名乗る彼の口からいかにして三人の刺客を倒したかが語られますが、始皇帝は彼の嘘を見破ります。はたして真実は?
この映画の第一の特徴と言えるのが透明感のある美しい映像です。鮮烈な色彩と幽玄な自然が融合し、美しく印象的な画面をつくりあげています。特に静かな湖の湖面で繰り広げられる二人の剣士の対決シーンは印象的です。また、脚本もよく出来ていて、無名(ジェット・リー)の語る物語、始皇帝が推測した物語、真実の物語、という3つの物語が語られる中、「無名の目的は?三人の刺客が彼に敗れた本当の理由は?」と引き込まれていきます。入り組んだ話なのですが、各物語ごとにテーマとなる色が決められていて、背景、衣装に統一した色を用いられているので混乱せずに見ることができます。また同系の色で徹底して統一したことで画面は独特で美しく印象的に仕上がっています。アクションも激しさよりも美しさを追求した独特なもので、特撮により水滴、落ち葉などが加わり、幻想的なものになっています。
ジェット・リーはミステリアスな剣士「無名」を演じ、人間離れしたアクションを見せてくれます。同じくカンフーアクションの名手、ドニー・イェンと緊張感あふれる立ち回りを見せてくれるのもアクション映画ファンには嬉しいところです。トニー・レオン、マギー・チャンも物語ごとに個性の異なる難しい役どころを好演しています。またベテラン俳優、チェン・ダオミンが重厚な演技で、英雄「秦の始皇帝」として剣士ジェット・リーと緊張感のある対峙を見せて、本作の背骨ともいえる「英雄とは?」というテーマを観客に問いかけています。
非常に優れたアクション俳優であるジェト・リーが、イマイチ面白くない映画にばかり出ている状況を残念に思っていた私にとって本作は、とても満足度の高いものでした。この映画の主演を機に、彼がより素晴らしい作品で活躍し、世界トップクラスのアクションスターの地位を確立することを楽しみにしています。
と思ったら、次の主演作「ブラックダイヤモンド」がこれまたイマイチ…。嗚呼。
CINEMA DATA
2002年制作
【配給】 | ワーナーブラザース |
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【監督】 | チャン・イーモウ |
【出演】 | ジェット・リー |
トニー・レオン | |
マギー・チャン | |
チャン・ツイィー | |
ドニー・イェン | |
チェン・ダオミン |
ムービーテレビジョンよりDVD発売中
©Eiga-zaru 2004-2018
※掲載している情報は、2005.09.01の情報です。
そのため記載内容が、最新のものと異なる場合があります。
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