年越しのカウントダウンパーティーを控えた大晦日のホテルアバンティにはそれぞれの人生を生きる数多くの人々が集っていた。
宿泊客として来た別れた妻と再会した副支配人、歌手の夢を諦め田舎に帰ることを決意したベルボーイ、汚職事件でマスコミに追われている大物政治家、客室係として働いているその元愛人、自信を喪失した大物演歌歌手…。
物語はそれぞれの登場人物のドラマが同時進行で語られ、複雑に絡み合いながらクライマックスのカウントダウンパーティーに向けて突き進みます。一見、複雑な構成ながら、少しもわかりにくさを感じることなく、それぞれのドラマにきっちりとハッピーな結末が用意してあり、こういったシチュエーションコメディの名手、三谷幸喜ならではの面白さが味わえます。

本作の楽しさの大きな要素にキャスティングが挙げられます。本作で三谷幸喜監督は自分が過去の映画・舞台・ドラマで起用して、その個性をよく知っている俳優を数多く配しています。真面目で皆に信頼されているものの、かつての妻につまらない見栄をはったためにどんどんウソを重ねる副支配人に役所広司、一度諦めた夢が奇妙な縁で再び目の前に現れる歌手志望のベルボーイに香取慎吾、表彰式に出席するためにホテルに来たものの浮気相手のコールガールと出くわし狼狽する中年男に角野卓造、などなど三谷作品でおなじみの俳優がずらりと並びます。その結果、新鮮味にはやや欠けるものの、それぞれの役者の使い方を心得て使っているので、「ずるいなぁ」と思ってしまうほど面白いのです。
だって「渡る世間は鬼ばかり」などで有名な角野卓造さんが少ない髪を振り乱して走り回ったり、伊藤四郎が白塗りで右往左往したり、西田俊行がパンツ一丁で熱唄したり…。可笑しいに決まってるじゃないですか。(笑）
もう一点小さな楽しみとしては役所広司、唐沢寿明、オダギリジョーという三世代にわたる男前が笑えるメイクで出演しています。
役所広司は鹿の被り物、オダギリジョーはデコの広いメイク、唐沢寿明にいたってはハゲズラに女装という多作品ではお目にかかれない姿を披露しています。

シチュエーションコメディを得意とする監督が、それぞれの俳優を得意とする役柄に配して作られた本作は、意外性には欠けますが、期待を裏切らない傑作コメディに仕上がっています。また、それぞれの登場人物が小さなハッピーエンドを迎える本作は見終わった後にスッキリした気持ちにしてくれますので、モヤモヤと落ち込んでいるときにはおすすめの一本です。

CINEMA DATA

2006年制作

フジテレビよりDVD発売中