30年以上も優勝から遠ざかり、万年Ｂクラスの弱小球団、クリーブランド･インディアンズ。亡くした夫からこのダメ球団を引き継いだ未亡人の新オーナーは、本拠地をマイアミに移すべく、チームを最下位にして観客動員数を最低レベルにまで落とすことを企みます。そのために三流選手ばかりでチームを編成しますが、この連中が一癖も二癖もある連中ばかり。オーナーの思惑通り、敗戦を重ねますが、徐々にその秘められた力を発揮してチームは上昇気流に乗っていきます。なんとしてもチームを最下位にするべく、オーナーは次々と手を打ちますが…。
本作の楽しさを支えているのは個性的な登場人物達です。膝を壊した元オールスター選手、脚は滅法早いが、バッティングはサッパリの陽気な黒人ルーキー、パワーはあるが変化球にはサッパリの巨漢のブードゥー教信者、剛速球だがコントロールがサッパリの元不良投手などなど、とにかく個性豊かです。ドタバタしながらも、インディアンズのファンからも見放された彼らが徐々に成長し、優勝を目指して突き進むストーリーは単純ですが、野球好きにはたまらない面白さです。また、出演者の多くが野球の経験者で、試合シーンがリアルで迫力があるところも見所の一つと言えるでしょう。

主演はトム･べレンジャー、「プラトーン」「山猫は眠らない」などの戦争映画でおなじみのコワモテ俳優です。本作ではもう一度自分の人生を立て直そうと最後のチャンスに賭ける、チームリーダーを好演しています。元不良の剛速球投手「ワイルドシング」リック・ボーンには、「張り込み」「プラトーン」のチャーリー・シーン。今では奇行で知られる（？）彼ですが、本作では若々しい姿をみることが出来ます。今では「ブレイド」などで黒人アクションスターのトップに立つウェブリー・スナイプスがコミカルな役柄で出演しているのも面白いところです。ちなみに彼はデ・ニーロ主演のサスペンス「ザ・ファン」でも野球選手を演じています。

アメリカは野球発祥の地だけあって、たくさんのベースボール・ムービーがありますが、中でも本作は代表的な一本だといえるでしょう。弱いチーム、弱い選手が成長して優勝を目指すと言うのはスポーツ映画の定番で、そうした意味でも本作は典型的な作品だと言えます。
大人気を博した本作は続編、その続編とシリーズ化されましたが、残念なことに駄作ばかりで、本作の面白さの足元にも及びません。(この続編には日本人選手としてとんねるずの石橋貴明が出演し、ハリウッド･デビューを果たしています。)

最近のファンは実感がないかもしれませんが、阪神タイガースもかつては万年最下位の弱小チームでした。本作公開当時は正にタイガースの暗黒時代で、私が本作に熱中した理由の何割かはそうした弱小チームファンの心理、願望が働いたことは否定できません。ですから、本当に本作を楽しむためには、弱いチームを長年応援しているという背景が必要なのかもしれません。

きっと、ジャイアンツのファンもあと20年ほど我慢すれば、本作の本当の面白さがわかるようになるでしょう。
…わかりたくない？やっぱり。

CINEMA DATA

1989年制作

ワーナー・ホーム・ビデオよりDVD発売中