目の前で両親を射殺されたブルース・ウェインは、犯罪を強く憎み、また自分の憎悪の感情に恐怖するようになります。彼は悪と戦い、自分の恐怖感に打ち勝つ術を求めて世界を放浪します。様々な苦難の末、悪と戦う術を手に入れた彼はゴッサムシティーに舞い戻り、悪との闘争をはじめます。
漆黒のマスクとマントを身にまとい、最新の秘密兵器を駆使して悪と戦うヒーロー、バットマンの誕生の秘密が解き明かされる本作は、シリーズ独特のヒーローものでありながらも重苦しく暗いムードを踏襲しています。これまでのバットマンシリーズではバットマンと対峙する悪役の誕生秘話、動機といったものが大きな要素を占めていましたが、本作ではバットマン自身の動機とルーツが語られます。もちろんバットマンのコスチュームや秘密兵器の由来などが語られるのですが、むしろテーマは内面的なものに置かれています。バットマンがなぜ悪と犯罪を憎むようになるのか、自分の内面にある恐怖心をいかにして克服していくのかということを丁寧に描写しており、結果として子供向けというより、どちらかというと大人向けの映画に仕上がっていて、シリーズのファンはもちろん、そうでない方にも楽しめると思います。もちろん闇夜にマントを翻して悪と戦うバットマンの姿は抜群に格好良いので、お子様やアクションのファンも楽しめる一本だと思います。

監督は「メメント」「インソムニア」など独特の着想が評価されている鬼才、クリストファー・ノーラン。本作もありきたりの味付けではなく、ひねりを効かした仕上がりになっています。主演はクリスチャン・ベール、屈折したヒーローを好演しています。忠実な執事アルフレッドをマイケル・ケイン、数少ない味方である警官ゴードンにゲイリー・オールドマン、秘密兵器を制作する老人フォックスにモーガン・フリーマンと脇を固めるメンバーも豪華で演技派がズラリと揃っていて、全体を引き締めています。
「ラストサムライ」で高い評価を受けた渡辺謙も出演していますが、印象的ではあるものの出番はわずかで、ちょっと残念。どうも日本での報道が大げさだったようですね。

漫画の映画化はもう立派な映画のジャンルとして確立されたといってもいいでしょう。何しろ最近ではアメリカの漫画のみならず、日本の人気コミックにもハリウッドから映画化の話が来る程です。我々が何気なく読んでいるコミックがハリウッドで映画化されて、世界的にヒットすることも十分にあり得ることなのです。

というわけで、「サザエさん」ハリウッドで映画化希望。とりあえずアナゴさん役にはモーガン・フリーマンを。

CINEMA DATA

2005年制作

ワーナー ホーム ビデオよりDVD発売中