女優のクリスは12歳の娘ミーガンの異常に悩まされていました。明るく快活だった彼女が、まるで人格が変わったように汚い言葉を吐いたり奇妙なことを口走るようになったのです。病院での様々な検査も徒労に終り、ついに彼女は一人の神父を訪ねます。彼女に請われてミーガンに会ったカラス神父は葛藤のすえ、悪魔払いの儀式を行う事を決心します。
本作は1973年に制作されたホラーの名作「エクソシスト」を20年以上の時をおいて、監督ウィリアム・フリードキンによって、カットされたシーンを加え、デジタル処理を加えて再編集したものです。1973年に公開された「エクソシスト」は独特な映像手法と少女ミーガンの特殊メイクなどで話題を集め、アカデミー脚本賞をはじめ、数々の賞を獲得しました。特に数分の一秒という短さで一瞬だけ映る不気味な顔や、ストーリーと無関係に背景に不吉なものを映すという、不気味な雰囲気をかもし出す映像手法は、本作を他に類を見ない良質のホラー映画に仕上げています。
ディレクターズカット版が1973年版と大きく異なっている点は、数々の未公開シーンが加えられていることですが、結果としてカラス神父とミーガンが対峙するまでをたっぷりと描くことになっています。これを冗長と見るか効果的と見るかは意見の分かれるところですが、私としては少女ミーガンの抱える憂鬱や、自らの信仰に疑問を感じているカラス神父の人間的な弱さなどが、きめ細かく描かれていてより効果的だと思います。

ディレクターズカット版が作られる背景には製作者とプロデューサーの立場の違いがあるように思います。要するに監督の意図に反してプロデューサーが編集に手を加えることが少なからずあり、納得いかない監督は「俺がやりたかったのはこうじゃないんだよ」とばかりにディレクターズカット版を作るわけです。ところが必ずディレクターズカット版のほうが面白いかというと、これがそうでもないのです。このへんがややこしいところで、ディレクターズカット版を見た後に「そりゃカットするわな」とプロデューサーに同意することもしばしばです。結局のところ、物事の感じ方は人それぞれで、必ずしも監督のほうがプロデューサーより優れている（というか自分に合っている）とは限らないわけです。
本作の場合はそうした事情と異なり、20年前の名作を現在の視点で監督が再編集したといった意味合いが強いようです。「当時の観客には理解してもらえなかっただろうけど、今なら…」ということでしょう。

さてディレクターズカット版には「カットしたシーンを加えてチョイと編集して、元手無しでもう一儲け。ウシシ。」という映画会社の思惑があることも見過ごせない事実です。「ディレクターズカット版？未公開シーンがある？真のエンディング？ウヒョヒョ。」といって買うファンが少なからずいるということですね。もちろん賢い映画ファンならばこんな手にはひっかかりませんけどね。
…ええ、騙されませんとも。

CINEMA DATA

2000年制作

ワーナー ホーム ビデオよりDVD発売中