ラヂオの時間

軽い気持ちで、話の弾みでついてしまった小さな嘘やごまかしのために、困った状況に陥ったことはありませんか?話の勢いでついつい誇張したり、知らないものを知っていると言ってしまったり。その嘘を隠すためにまた新しい嘘を重ねて、いよいよ引っ込みのつかない状況になってしまったということはきっと誰にだって覚えがあるはずです。この「ラヂオの時間」はそういう困った状況を克明に描く良質のコメディです。
ラジオドラマの製作現場、主演女優のわがままで主役の設定を変えたばかりに次々とドラマに矛盾が出てしまいます。
つじつまを合わせるため、脚本に新たな変更を加えるうちにドラマはどんどんあらぬ方向へ。慌てるスタッフ、逆上する脚本家、場をつなぐ役者達、ドラマを無事放送し終えることが出きるのか!
監督・脚本は大河ドラマ「新鮮組!」や「古畑任三郎」など様々な舞台、TVドラマの脚本で有名な三谷幸喜です。
お得意のシチュエーションコメディだけあって、よく練られた脚本と演出で実に面白い映画に仕上がっています。
この映画、次から次へと持ち上がる難問と必死に対応する人々の様子がとにかく可笑しいのです。登場人物の誰一人として、無理に観客を笑わせようとする者はいません。
皆、それぞれの仕事、立場において必死にがんばっていて、必死であるが故に可笑しいのです。
恐ろしくややこしい状況に、観客は笑いながらも、とんでもない方向へと迷走するラジオドラマの行方にハラハラドキドキします。このピンチをどう切り抜けるのか、どんなウルトラCでドラマの破綻を防ぐのかという興味でどんどん物語に引き込まれていってしまうのです。ある意味、ジェットコースターのようなコメディだと言えるでしょう。
多彩な出演陣も本作の見逃せない要素です。唐沢寿明、鈴木杏香、西村雅彦、戸田恵子といった実力派が中心を固めているだけでなく、脇役にも細川俊之、井上順、藤村俊二、渡辺謙といった個性的な面々を配していて、確かな演技力で登場人物をリアルで親しみの持てるものにしており、どの登場人物も実に魅力的です。
もう一点、エンディングの曲にも注目しましょう。劇中で編成担当者を演じた布施明が美声を聞かせてくれるのですが、この歌が素晴らしい。
三谷幸喜自身の作詞で布施演じる編成担当者の心情が歌詞になっているのですが、これが実に面白い。スタッフロールの最後まで観客を楽しませてくれます。(役者としても布施明はとぼけた業界人を好演しており、彼は同じ役で三谷幸喜の次の監督映画「みんなのいえ」にもチラッと登場しています。)
練り上げられた脚本の良質のコメディでおなかいっぱいにしてくれる、本作はそんな映画です。
「裸の銃を持つ男」のような突発性ギャグを詰め込んだ映画も悪くありませんが、コメディ映画好きの私としては、本作のような本格的コメディ映画がもっと創られることを願って止みません。
CINEMA DATA
1997年制作
【配給】 | 東宝 |
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【監督・脚本】 | 三谷幸喜 |
【出演】 | 唐沢寿明 |
鈴木京香 | |
西村雅彦 | |
井上順 | |
戸田恵子 |
東宝よりDVD発売中
©Eiga-zaru 2004-2018
※掲載している情報は、2005.07.01の情報です。
そのため記載内容が、最新のものと異なる場合があります。
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