バロン

荒唐無稽という言葉があります。辞書をひくと「根拠がなく、現実性のない・こと(さま)。でたらめ。」などと書いてあります。今回ご紹介する映画「バロン」を一言で説明するならば、この言葉が最も相応しいのではないかと思います。
中世ドイツ、トルコ軍の猛攻にさらされるドイツのある街。ある時、攻撃と貧困にあえぐ人々の前に一人の老人が現れます。彼は自分こそ物語として知られる伝説の英雄バロンであると名乗りますが、人々は全く信じようとしません。ただ一人、旅芸人の一座の少女、サリーだけは彼を信じます。懸命に街を救うよう頼むサリーに渋々バロンも折れ、トルコ軍と戦うべく、かつての仲間を探す旅に出ます。こうしてバロンとサリーの冒険が始まるのですが…。
本作の一番の魅力は作りこまれた御伽噺の世界です。建物や人々の衣装は絵本から抜け出してきたような素晴らしい出来栄えで、戦争中の街、月の宮殿、火山の内部など、どの場面も素晴らしく本作独特の世界を創り上げています。この画面を見るだけでも一見の価値はあると思います。また、荒唐無稽なバロンの大冒険は理屈抜きに楽しめるものになっています。本作は「ほらふき男爵」という御伽噺がモチーフになっていますが、まさにその「ほら」が映像化されているわけで、「そんなアホな」と突っ込むことすら忘れてしまう愉快で爽快なお話になっています。どのくらいデタラメかという一例をあげるならば、本作では「足が速い」というのはすなわち「弾丸よりも速い」ということになります。デタラメもここまで突き抜けてしまうと、もう痛快です。
監督はテリー・ギリアム。モンティ・パイソン結成メンバーで監督としては「未来世紀ブラジル」や「12モンキーズ」などの作りこまれた異世界と独特の視点で有名です。主演のジョン・ネビルは時には勇敢で時には笑っちゃうほど情けないバロンを好演しています。なにかと寄り道をするバロンの尻を叩き、冒険を続けさせる少女サリーを演じたサラ・ポリーの感情豊かな表情も素晴らしい。女神を演じたユマ・サーマンの美しさとイカレた月の王様を演じたロビン・ウィリアムスの怪演ぶりも印象的です。
(ロビン・ウィリアムスは洒落なのかクレジットでは違う名前になっていますが)
本作は子供の頃、誰もが空想した夢の世界の映像化と言ってもいいかもしれません。もし貴方がせちがらい世の中に疲れを感じていらっしゃるなら、本作をご覧になるとよいかもしれません。
上質な映像で語られる夢物語が、ほどよく貴方の脳を揉みほぐしてくれるのではないかと思います。
CINEMA DATA
1989年制作
【配給】 | コロンビア |
---|---|
【監督】 | テリー・ギリアム |
【出演】 | ジョン・ネビル |
エリック・アイドル | |
サラ・ポリー | |
ユマ・サーマン 他 |
ソニーピクチャーズエンタテインメントよりDVD発売中
©Eiga-zaru 2004-2018
※掲載している情報は、2007.01.01の情報です。
そのため記載内容が、最新のものと異なる場合があります。
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