犬の麻酔について質問させてください。先日、愛犬の検査のために麻酔が必要と言われました。麻酔は怖いと聞きますが、実際はどうなのでしょうか?
ヒトの場合、検査のために全身麻酔を必要とすることはあまりないと思いますが、動物の場合、CTやMRIといった画像検査、慎重を要する内蔵器のバイオプシー検査や痛みを伴う骨髄検査や骨生検、特殊なレントゲン検査や内視鏡検査など検査するだけでも全身麻酔を必要とすることが多いです。歯石除去や抜歯などの処置にも必要になります。また、飼い主さんでも触れない狂暴な犬や、怖がりで人を寄せ付けない猫の場合、採血やレントゲン検査をするのにも麻酔や鎮静剤が必要になることがあります。
当院での手術を行う場合の全身麻酔についてお話ししますと、まずは麻酔をかける前に、血液検査、レントゲン検査、など諸検査を行い、麻酔をかけるうえで問題がないことを確認します。手術によって生じる痛みの程度に合わせて鎮痛剤を選択、投与した後、鎮静剤を投与します。次に注射麻酔薬をゆっくり静脈内に投与し、寝かせ、開口しても抵抗することがなくなった時点で気管チューブを気管に挿入します。そこから先はガス麻酔に切り替え手術に入ります。強い痛みを生じる手術の場合は鎮痛剤の点滴投与をおこないます。それ以外にも術前術後に切皮部位に局所麻酔を投与し、術後の疼痛をできるだけ和らげるようにします。手術中は麻酔モニターを使用して麻酔中の心拍、呼吸の管理、血圧、体温、炭酸ガス濃度、動脈血酸素飽和度などを計測しながらしっかり状態管理をします。 現在、動物医療で使われている麻酔薬は人医療で使われているものとほとんど同じですし、上記の麻酔モニターの機器も非常に性能の高いものですので、何十年も前から比べると麻酔の安全性は高まっていると私自身思います。ですが、麻酔は絶対安全、ということは残念ながらまだ言い切ることはできません。まれではありますが麻酔中には予期せぬ出来事が起こることはヒトの医療も同じだと思います。かかりつけの先生と十分相談して、ワンちゃんにとってどうしても必要な検査であればお受けになればいいかと思います。